レポ | 「小さな対話から都市をプランニングする」開催されました

書籍「小さな空間から都市をプランニングする」
出版記念 トークイベント

6/9(日) 「小さな空間から都市をプランニングする」出版記念トークイベントが開催されました。予定では20:00までのところ、後半のセッションで話が色々と深まり、30分以上オーバーする盛会となりました。

はじめに、法政大杉崎先生より今回のイベントと書籍の趣旨説明をしていただきました。
都市空間再編について、これまでに多くなされてきた都市全体のマスタープランや画一的なまちづくり手法などでは将来に対するイメージがつきにくく限界が見え始めていることの問題提起がありました。

次に事例紹介の一人目、住まい・まちづくりデザインワークス野田さんからの話題提供です。
主に富山県高岡市での実践と、博労町まちかどサロンなどの事例をもとにお話いただきました。
プロジェクトへの関わり方ですが、建物調査、事業計画、ワークショップ形式による改修要望の整理までを含めた改修設計監理を担当されていて、ただ設計して終わりではなく、事業全体の方向性やシステムをどのように回していくか、初期投資から運用・回収までを想定したマネージメントも併せてやることで、必要な時に必要な技術提供をしている印象を受けました。
最初は反対していた人たちが最終的には活動の中心となり、運営を支えるまでに至ったプロセスを具体的に話していただき、こちらとしても勇気をもらった事例紹介でした。

続いて、先ほどとは大きく趣向が異なりますが、かみいけ木賃文化ネットワーク主宰の夫婦ユニット山本山田さんのお二人にお話いただきました。
彼らは北池袋の地に古くからある木賃アパートに目をつけ、価値がないと思われていたものに価値を見出し、十数年先を見据えた地域活動を展開しています。具体的にはアパートの改修によるシェアアトリエ、キッチン、コワーキングスペースを自ら運営し、地域の方やシェアメンバーが日々の活動に利用できるような場所を設えています。
最初は奇異な目で見られたそうですが、積極的に青年部に入ったり、地道に地域活動に参加したことで、最終的には地域の方にも認めてもらえたという経緯がありました。また最近では、一見すると価値がないと思われがちな物件情報が優先的に回ってくるそうです(笑)
我々より上の世代においては、ボロボロで何の価値にもならないと思われがちな古民家が、実はこれから先十数年のうちに価値転換する時が来るのではないか、という示唆もありました。

その後、私たちオーナーからは会場となっているみちくさくらすの立上げ経緯や今後の展望などを少しプレゼンさせていただきました。やりたいという思いを実現するためには、社会に対してその思いを表現し続けることでしか周囲に伝わらないのだということを改めて実感しました。

以上の話を踏まえて、法政大岩佐先生より意味付けをしていただきました。
”小さな空間”とは全体を包含する”部分”であり、地域の中での「空き」となる部分にまちの課題が内包されているとのこと。”小さな空間”は全体と地続きの関係にあるため、まちの課題や歴史を紐解く最小の単位になりうるのでは、という意味だと解釈しました。
”小さな空間”を自らの手でつくりかえ、チューニングし続ける根気と熱意が大事なのだと感じました。

最後に会場全体でディスカッションを少しして閉会となりました。
会場からは、そもそも事前知識がなかったり、情報感度がなくみすみすチャンスを逃したり、最初から諦めている人もいるのでは?という話も出ました。
ただ、それでもやりたい場合にはどうすれば良いのか?多少のリスクは負いながらも、まずはやりたいことを表現し続けていれば、何かしらの反応が返ってきて、次第に仲間も増えていくのではないかという風に思いました。
最近では特に、やり直しのきく小さな空間だからこそ、色々な人とシェアしながら動きにつなげていく例が増えてきているような気がしています。共感の連鎖がまた新たな活動の展開につながっているのでは?という可能性を改めて感じた夜でした。

長くなってしまいましたが、
モデレータの杉崎さん、スピーカーの野田さん、山本山田さん、岩佐さん、どうもありがとうございました!

スピーカー(敬称略):
山本直・山田絵美 (かみいけ木賃文化ネットワーク代表)
野田明宏 (住まい・まちづくりデザインワークス代表)
岩佐明彦 (法政大学デザイン工学部教授)
杉崎和久 (法政大学法学部教授)

協力:
みちくさくらす