背景

■ 小学生の放課後

小学生になると途端に、子どもは夕方まで手厚いケアをしてくれていた保育園とは全く異なる、放課後の自由な時間の中に放り出されます。放課後は小学生にとって一日の大部分を占める時間です。親は子どもに放課後をどこでどのように過ごさせるのか、頭を悩ませるようになります。これが“小1の壁”問題です。

公立学童は安価ですが、親が就労している必要があり、小学校低学年が優先的に入れる仕組みになっているため、全ての子どもが過ごせるわけではありません。さらに近年では共働き家庭が増え、多くの子どもたちが狭いスペースで遊び、過ごし方については基本的に子どもの裁量に任されている実情もあり、学童に行きたがらない子も出てきている状況です。

一方で、民間学童は送迎や食事、英語の授業などきめ細やかなサービスによって安心はできますが、高価で敷居が高く、事前にプログラムが組まれていることが多いため、自由度が低くなります。塾や習い事についても毎日ずっと授業があるわけではないため、気軽に過ごせるとは言いづらい状況です。

■ 教育、学びのありかた

私たちが経験してきた学校教育は、板書を写し、一方的に先生の話を聞き、テストのために暗記をし、自分の頭で考える機会もあまりない、敷かれたレールの上を歩いていい大学に入ることがゴールであるかのような、そんな環境でした。

しかし、私たちは大人になってからお金の仕組み、社会の制度や成り立ち、自身の健康や食事の大切さなどの生きて行く上で必要な知識についてあまりにも無知だということに気づきます。

こういった従来の教育を改革しようという流れが強くなり、一方的に講義をうけることに留まらないアクティブラーニング、プログラミングやAIなどテクノロジーを取り入れた学習、コミュニケーション力や創造力、表現力を育むことに重きをおいた学習など、型にはまらない学びや活動に注目が集まっています。

子どもの頃から日常的に社会や経済の状況に触れ、お金の使い方、文化や暮らし、食事や健康について学びがあったなら、より楽しく暮らせる人が増え、より豊かな社会になっていたのではないかと想像してしまいます。少なくとも、これからの子どもにはそういった学びの体験をさせてあげたいと感じます。

■ 子育て世代の負担

子育て世代は20代から40代という働き盛りである時期でもあり、子どもに最も手がかかる時期でもあり、日々試行錯誤しながら仕事と家庭のバランスをとって生活しています。忙しく仕事をしているしわ寄せが子どもや食事にきてしまうことも少なくありません。

定時になったら慌てて職場を出て、電車に飛び乗り、子どもを迎えに行く。今日の夕飯どうしよう?時間もないし疲れたし、スーパーで買って帰っちゃおう、子どもには申し訳ないけど…。パパは帰りが遅いので子どもと二人きりでごはんを食べる。子どもと職場の人としか言葉をかわしていない日も珍しくありません。

私も忙しく、職場と家とを往復するだけの毎日に疲れていた1人でした。たまには息抜きして子どもに食べさせても罪悪感のないごはんを食べて帰れる場所があったらいいのに…いざというときに頼れる友達が近所にたくさんいたらいいのに…気軽に集まって子育ての大変さを共有する場があったらいいのに…そんなことを日々考えていました。

■ 都心の子どもの居場所の少なさ、ご近所さんの顔が見えない世界

私たち夫婦は大都会新宿区で子育てを始めてからというもの、パパママや子どもが気兼ねなく遊べる場所が少ない、安全安心のご飯が食べられ、ゆっくりくつろげる飲食店が少ない…など子どもの居場所の少なさに驚き、不便を感じていました。また、同世代の友人を作りたいと思ってもお隣に誰が住んでいるのかわからない、住人がどこで交流をしているのかわからない、顔が見えず居心地の悪さを感じると同時に、人が繋がる場を作ったら、面白い人たちが集まりなにか面白いことがおこるのではないか、とある種の可能性も感じていました。